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特別寄稿「震災と私たち」
 この度の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)によって、被害に遭われた全ての方々に心より見舞いを申し上げます。
 以下に、弊社と共同研究を行っておりますアイエムエフ研究センター/アイエムエフ株式会社からの特別寄稿をそのままご紹介させていただきます。本文を通じて少しでも皆様方のお役に立てることができれば幸いに存じます。

「震災と私たち」 〜災害によるこころとからだの変化を知ろう〜

 今回の震災では、被害の及んでいる地域が非常に広範囲にわたっていることが大きな特徴です。町全体が地震や津波、原発事故などで壊滅的被害を受けた福島県を中心とした地域、岩手県から茨城県にかけての太平洋沿岸地域の状況は非常に痛ましいものがあります。また、東北のその他の地域、そして関東・首都圏においても直接的・間接的に大きな影響が出ております。例えば、首都圏では電気、水道、交通などの生活インフラへの影響や風評により過度な不安を招き食料品や生活物資の買占めなどの状況も表出し、さらに、毎日有感余震があったりするなかで当日の大きな揺れやその後の混乱を思い出してしまうなど不安を感じながら過ごしている方も多い事でしょう。このように被災地の皆様はもちろん、その他の地域に暮らす人たちも今回の災害の大きな影響を受けていると考えられます。
甚大な被害を受けている地域の支援は何よりも最優先されることが必要です。そして、その他の地域でも自分たちでできることに取り組んでいくことはとても大切な事です。その上で、すべての地域の方々も含めて、災害による自分自身の心と体の変化に気づいていただき、身心の健康を保っていただくことも、これから災害から復興する過程においてとても大切な事です。これらのことは、過去の阪神淡路大震災などの大きな災害の経験からも明らかにされています。そこで、災害によるこころと体の変化を知っていただくことから説明をさせていただきます。是非ともご理解いただき今後の生活の中でお役立ていただきますようお願い申し上げます。

まずは、このような災害の後に私たちはどのような影響を受けているのでしょうか。私たちの心身に見られる変化を挙げながら考えてみます。
大人であっても、以下のような変化がみられる時があります。自分自身、そして周囲の方々の変化に気づいたことはありませんか。
<変化例>
● 頭痛、めまい、吐き気、下痢、胃痛、動悸、しびれなどが取れない。
● 気が高ぶって寝つきが悪くなったり、途中で目がさめたりする。
● 食欲がおちる。
● 疲れやすく、からだがだるい。
● 災害の体験に関連した内容の不快な夢を見る。
● 災害の体験に関連した光景が、突然、繰り返しよみがえって不快となる。
● 以前と比べて、活力や集中力が低下している。
● 物音などちょっとした刺激にもびくっとしてしまう。
● 以前に比べて、イライラして、怒りっぽくなる。
● 涙が止まらない。
● なんとなく落ち着かない。
● 強い不安や心配、おそれの気持ちがわく。
(項目は、災害時の「こころのケア」の手引き、東京都福祉保健局、2008年5月より)

また、あなたの周りのお子さんに次のような変化はありませんか?
<変化例>
●表情が少なく、ぼーっとしていることが多い。
●話をしなくなったり、必要以上におびえている。
●突然興奮したり、パニック状態になる。
●突然人が変わったようになり、現実にないことを言い出す。
●そわそわして落ち着きがなくなり、少しの刺激でも過敏に強く反応する。
●イライラいしていて暴れたりする。
●吐き気や腹痛、めまい、息苦しさ、頭痛、頻尿、おねしょ、眠れない、からだの一部が動かないなどの症状を強く訴える。
●今まで、言うことを聞いていたのに反抗をする。または、逆に、急に素直になってしまった。
(項目は、日本小児心身医学会中国四国地方会により平成13年3月の芸予地震(広島・愛媛)の際に配布されたリーフレットより)

では、これらの変化は異常なのでしょうか?
いいえ、決して驚くことも、特別視することもない「正常な」様子なのです。確かにこのような変化は嬉しいことではなく、不快なことかもしれませんが「異常」とか「病気」とか「症状」というように捉えることはありません。ですから、まず大切なことは「日常の生活」を大切にしていただくことです。食事や睡眠などの生活のリズムをできるだけ保ち、人とのつながりを大切にする、そういったいつもと同じことを大切にしていきます。また、信頼できる人に、自分で無理のない範囲で話を聴いてもらうことや、自分でリラックスできることをやることも役に立つでしょう。

また、お子さんに対しては、家族で過ごす時間を増やし、会話をして、お子さんのお話を聴いてあげるようにしましょう。生活のリズムが整うようにしてあげるとともに、上記のような変化があっても、むやみに叱ったり、突き放したりすることはせず、受けとめるようにしてあげましょう。また、頑張り屋、真面目、よく気が付くなど「しっかりしている」とよく言われるようなお子さんの場合は、無理をしていてもため込んでしまいやすいこともあります。時々、息抜きをさせてあげられると良いでしょう。

ここでいくつか注意があります。ひとつ目は、かつて、積極的に辛かった災害時の出来事をできるだけ早期に話してもらうことで将来の状態が改善されるという方法(専門的には「デブリーフィング」と言います)が紹介され、広く使われていたことがあります。しかし、現在ではこの方法には効果が認められないことが分かっています。無理にその時のことを話させることはかえって混乱を大きくすることもありますので避けましょう。話をする場合も、あくまでも、落ち着いた環境でその人の語りたいように語ることが大切です。
二つ目は、報道による二次的な被害です。特に、これは災害の周辺地域ともいえる首都圏では留意が必要でしょう。1995年の阪神淡路大震災の時も、直接には被災しなかった方が繰り返しショッキングな映像を見続けることで、のちにPTSD(心的外傷後ストレス障害)という治療が必要な状態になってしまったというケースが少なからず報告されています。繰り返しショッキングな映像を見ることの影響は決して小さくありません。治療が必要な状態にまではならなくても、少なくても不安は増していきます。不安が強まると、判断力の低下や、睡眠や食事などの日常生活に影響が出たりすることがあります。特にお子さんに対しては注意してあげたいものです。最近では家にいるときは心配でずっとニュースやワイドショーで取り上げられる地震関連の情報を見ているという方もいらっしゃることでしょう。しかしながら、こういう時こそ上手なマスコミとの距離の取り方を学びたいものです。
三つ目は、上にあげたような変化が長期化するときです。異常でも病気でもない可能性もありますが、相談することは全く恥ずかしいことではありません。長引くとき、またとてもつらいと感じるときには医療機関の受診を考えてください。

最後にもし、あなたが災害支援に参加する場合は、あなた自身が次のような変化を体験することがあるかもしれません。支援に参加する場合は、あなた自身も災害の当事者になります。もしかしたら凄惨な光景を実際に見たり、悲痛な声を耳にしたりすることもあるかもしれません。そのことによって変化が生じる可能性があります。

● 動揺した、とてもショックを受けた
● 精神的にとても疲れた
● 被災者の状況を、自分のことのように感じてしまった、災害現場の光景が突然目に浮かぶ
● 誰にも体験や気持ちを話せなかった、話しても仕方がないと思った
● 一緒にやっている仲間や組織に対して怒り・不信感を抱いた
● この仕事に就いたことを後悔した
● 仕事に対するやる気をなくした、辞めようと思っている
● 投げやりになり皮肉な考え方をしがちである
● あの時ああすれば良かったと自分を責めてしまう
● 自分は何もできない、役に立たないという無力感、悔しさを抱く
● 何となく体の調子が悪い
● 食欲不振、よく眠れない
● 強い罪悪感や自責感を持つ
● 涙もろくなる、落ち込みやすい、悲観的になる
● 興奮気味、常に緊張している
● 飲酒、喫煙量が増加か、減少
● 悪夢をよく見る
● 怒りっぽくなる

このような変化があっても、決して恥じることはありません。支援は、支援者の身心の健康が保たれて初めて可能になります。今、自分がそう感じていることをそのまま認めることが、自分自身を保っていく上でまず大切なことになります。その上で、自分が実施したことを整理して、必要な報告をしたら休息をとり、体を休めます。うまくいかなかったこと、無力感を感じたことではなく、自分が実施したことや手を動かしたことを思い出し、ポジティブにとらえるようにします。そしてその内容を仲間とも共有してください。その中で自分の限界を知りさらに仲間との相互支援をより強めていけることでしょう。リーダー的な立場に立つ方はこれらのことができるようにメンバーを支援してあげてください。
最後に、災害による心の変化やそのケアについて何かご心配な事がございましたら、弊社相談室までお気軽にご相談ください。一日も早い被災地の復興と皆様の健康を心よりお祈り申し上げます。

特別寄稿 アイエムエフ研究センター/アイエムエフ株式会社

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